APPLE VINEGAR - Music Award - 2026

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  • 眞名子 新
  • 後藤 正文

ここからは眞名子さんの歩みを振り返ってみたいと思います。小学校から高校3年生まで、ずっとサッカーに打ち込んできて。大学時代に音楽を始めたと。

眞名子はい。

後藤さんの学生時代と少し近そうな気がしますね。後藤さんは野球でしたけど。

後藤そうですね。 浪人時代にギターを買って、大学で初めて組んだバンドのまま現在に至る、みたいな感じで。それより前に音楽家を志したことはなかったけど、中学の時ユニコーンに憧れて、親父のギターを借りてみたんですよ。でも、(弾こうとしたら)指が痛すぎて(笑)。弦高がたぶん1センチくらいあったんですよね。「こんなの誰が押さえられるんだ、ミュージシャンってやっぱり凄いんだな」と思って、一度諦めた過去があります。眞名子くんはサッカーだったんですね。

関西代表に選ばれたこともあるそうですね。

眞名子そうですね。本気で上を目指してやってました。

眞名子 新
眞名子 新

そこから「自分で歌おう」と思ったのはどういう経緯で?

眞名子高校生の時に、ハナレグミさんのライブ映像を観て憧れたのが原体験として大きいですね。もともと歌うことは好きで、周りと一緒に歌う機会があったりすると「もしかしたら自分、ちょっと歌が上手いかも」なんて密かに思っていたりして(笑)。昔から音楽への憧れはあったんです。

でも、高校の3年間はサッカーに捧げて。

眞名子そこから受験期になった時に、勉強するのが本当に嫌で……「こんなにしんどいことがあるんだ」というくらい。その時に「大学に入ったら、自分が本当にやりたいことを本気でやろう」と決めたのがきっかけですね。バシッと方向転換した感じです。

後藤さんは、浪人時代に新聞配達をしていた時期があるんですよね。

後藤僕は静岡から東京に出てきたんですけど、学費が自分持ちだったので。「東京で新聞配達をして稼ぐから、それで(大学に)行かせてくれ」と親に言って。

その時点で、すでに音楽をやりたいという気持ちはあった?

後藤まだ全然なかったです。東京に出てきてから知り合った友達に、洋楽のCDをいっぱい貸してもらったんですよ。そこでオアシスやティーンエイジ・ファンクラブ、ベックとかを知って、「俺もやってみたい!」という流れでしたね。

後藤 正文
後藤 正文

後藤さんにとってのオアシスが、眞名子さんにとってはハナレグミだったということですよね。どんなところに惹かれたんでしょうか?

眞名子やっぱり歌声がとにかく魅力的で。ライブ映像を観ながら、お客さんとの距離感の近さがいいなと思って。そういうところが好きですね。

他にもいろんなインタビューなどでハナレグミへの愛を語ってきたみたいですが、永積タカシさんにお会いしたことは?

眞名子まだないんですよ。

お話ししたことも?

眞名子ないです。

メールやSNSなどで「実はファンです」と伝えたりとかは。

眞名子いや、ないですね。そんなことはもう、絶対できないです(笑)。

会ったら固まっちゃうレベル?

眞名子そうだと思います。どうなるか自分でも想像できなくて、逆に怖いんですよ。

眞名子 新
眞名子 新

後藤とってもいい人ですよ。僕は昨年、ベックが来日した時にバックステージでお会いしました。その時も会うなり、藤枝のスタジオの話をしてくれて。「あのスタジオ凄いね、応援してるよ」と気にかけてくれて。

もし永積さんに「応援してるよ」なんて言われたら、しびれますか?

眞名子しびれますね……!

後藤じゃあ、来年の「APPLE VINEGAR」のイベントは、眞名子くんとハナレグミのツーマンを企画するのがいいんじゃない?

眞名子そんなの叶っていいんですか!?

後藤逆に「僕らがそれを担っていいのか」っていう話ですけどね。もちろん僕らのイベントじゃなくても、きっとどこかで共演する機会はあるでしょうね。

眞名子夢ですね……いつか一緒にやらせていただきたいです。

音楽ルーツの話に戻ると、ご両親がサザン好きというのもお二人の共通項ですね。眞名子さんは中学校の卒業文集に「サザンオールスターズみたいになりたい」と書かれたとか。

眞名子そうです(笑)。車でいつも流れていたので、ずっと一緒に歌ってました。

後藤モノマネしました?

眞名子しましたしました!

後藤しますよね(笑)。僕も弟と「どっちが桑田佳祐に似ているか選手権」やりましたもん。

眞名子僕も兄弟でよくやってました(笑)。

眞名子 新、後藤 正文
眞名子 新、後藤 正文

プロフィールには「神戸の片田舎でフォークや歌謡曲を聴いて育った」とありますが、「自分にとってこれは大きかった」と思う存在を挙げるとしたら?

眞名子もともと小学校くらいからピアノも一応習っていて、ビリー・ジョエルを練習したりしていました。「New York State of Mind」とか。それも父親の影響なんですけど。

フォークでいうと?

眞名子ボブ・ディランですね。初期のアルバム『The Freewheelin' Bob Dylan』とかをめちゃくちゃ聴きました。

後藤ボブ・ディランは、何歳ぐらいでわかりました?

眞名子僕は大学の時、20歳くらいだったと思います。

後藤なるほど。僕は今でもよくわからないですね(笑)。コンサートには行きました?

眞名子行けてないんですよ……映画は観ましたけど。

後藤行ったほうがいいですよ、生きているうちに。めちゃくちゃ笑えますよ。

眞名子笑えるんですか?

後藤全然、原形を留めていないんですよ。昔の曲も。最高ですよ。「レジェンドって、ここまで来るとすごいとか感動するとかじゃなくて、笑えるんだな」って。こんなこと言ったらディランのファンに怒られるかもしれないですけど、とにかく観てほしいですね。ずっとニヤニヤしちゃう。

後藤さんはディランについて、今みたいに「とりつく島もないけど強烈に惹かれる人」という話をよくしている印象です。

後藤そうですね。どうしても僕らは英語のネイティブスピーカーではないから。歌われた瞬間にその含意をパッと吸収できないというか。詩集を読んでも(英語の)原文ではないから「ニュアンスが違うんじゃないかな」って気になっちゃう。改めて歌詞カードを見ながら、「自分だったらこう訳すな」ってやり方でしか吸収できなくて。そこはコンプレックスでもありますよね。ディランやケンドリック・ラマーを直接理解できないもどかしさ。サウンドの良し悪しについては語れても、言葉の核心にはそこまで迫れない。だから僕は、ディランについては「わかったふうな顔」ができないんですよ。

眞名子もしかしたら僕も、歌詞についてはまだ何も理解できていないのかもしれません。メロディの美しさ、歌い方とか、そういうものに純粋に感動しているというか。

後藤 正文
後藤 正文

眞名子さんは、ハーモニカを吹く時の角度がディランっぽくないですか?

眞名子そこは映画を観て、影響を受けました(笑)。

後藤そこは僕もちょっと思ったんですよ。ベンド(音程を変化させる奏法)しないところが、凄くディランっぽいなって。

眞名子そうなんですよ!

後藤ディランってベンドしないんですよね。たぶん、あんまりハーモニカが得意じゃないんだと思う(笑)。鳴らしっぱなしな感じがあって。どなたか専門家の方が、「あれは楽器というより、歌の間に入っている合いの手みたいなもの」と書いていたような気がします。

眞名子僕もまったくベンドできなくて。

後藤僕も苦手です。どうやってやってるんだろうって思います。

眞名子難しいですよね。ハーモニカのプロの方からしたら、「こいつ何を吹いてるんやろ?」って思われてるんやろな、と考えながら吹いてます(笑)。

後藤教えるのが上手なやつがいるから、今度紹介しますよ。僕は眞名子くんの音楽を聴きながら、「ミュージシャンを紹介したいな」と思ったんです。なぜかというと、(アルバムには)エレクトリックギターとかがほとんど入っていなかったじゃないですか。

眞名子一応、箱モノのギターは少し入れているんですけど、他は入ってないですね。

後藤眞名子くんはギターも上手いから、エレキも弾けるんだろうなと思いつつ。たとえば、ペダルスティールとかも入る余地はあるなと思って。たとえばTurntable Filmsの井上くん、ペダルスティールの宮下広輔くんとか、あの辺りの面々と合うんじゃないかなと思ったんです。彼らは引き出しもたくさんあるし、1930〜40年代の音楽も掘っているような人たちなので、一緒にやったら化学反応があるんじゃないかなと思って。

「カントリー友の会」ですね。

後藤今度、ご飯に行きましょう。

眞名子ぜひ! 勉強させていただきたいです。

眞名子 新、後藤 正文
眞名子 新、後藤 正文