大賞選出
長時間の話し合いを終え、いよいよ大賞及び特別賞の選出へ。今年も多数決ではなくディスカッションで選出をすることが決まり、10分の休憩中に選考委員それぞれが推薦するアーティストを絞り、選考会が再開されました。
accobin私は本当は3作で迷ってたけど、2作まで絞りました。眞名子さんとkurayamisakaです。眞名子さんは、アップルビネガー的に、カントリーの需要少ない説もあって(笑)、そっちじゃない文脈でも全然広がる可能性ある方やと思うし、むしろもう広がり始めてる方だとは思うんですけど、カントリー/フォークという意味でも、応援したい気持ちもありつつ、もちろんそれ以前に、純粋に作品がめちゃくちゃ良かったので、それが一番の理由です。kurayamisakaに関しては、最近こういうバンドが増えてるっていうことを実はあんまり知らなかったんですけど、でもこのジャンルの曲を作ってる方の中でも、相当いい曲を書いてる人たちだと思うし、こういう界隈が賑わってることは純粋に嬉しいので、kurayamisakaも私の中でかなり推しです。
mabanua僕は野口文さんと眞名子さんとPeterparker69で迷ってて。ただ野口さんを一番にするのはなかなかエッジが効いてるのかなと思うので…眞名子さんかPeterparker69かなっていう感じはしますかね。どっちもアップルビネガーっぽいなと思います。この前のライブイベント(「APPLE VINEGAR -Music Award- 2026 Opening Party」)で言ったら、Dos Monos枠がPeterparker69で、MONO NO AWARE枠が眞名子さんみたいな、そんな感じはしますけどね。
Licaxxx私は野口文。次点でPeterparker69かなと。野口文が私の中で存在として圧倒的でした。なので、続きの音楽を早く聴かせろという意味でも、賞をあげたいなと。Peterparker69は他でも評価されそうな気がしているので、「アップルビネガーらしい」という意味でも、野口文かなと思います。
有泉私は眞名子新、Peterparker69、野口文ですね。眞名子さんは10年後も20年後も「やっぱりこの人は本当にすごい歌うたいだったな」っていう風に評価されていくべき才能だなと思っていて。そういう意味での将来性を一番感じるのは眞名子さん。Peterparker69はやっぱりすごく自由かつユニークで、フィールド的にポップなところも含めて塗り替えていける可能性があるなと思いました。で、野口さんはとにかく気になる。だし、作品に込めている意思みたいなものを一番強く感じるなと思ったので、この3組のどれかかなと思ってる感じです。
後藤迷いますよね。僕が考えてたのはkurayamiskaとPeterparker69で、kurayamisakaは少なくとも特別賞ぐらいはあげたい。Peterparker69もクオリティ的に素晴らしいなと思います。まあでも、野口くん、Peterparker69、kurayamisaka、眞名子くんが挙がってるのは納得できますね。
ーこの4組の中から、どなたを大賞にするか。
後藤「野口文をどう考えるか問題」はありますよね(笑)。
有泉野口さんは次作もノミネートされる気もしますけどね(笑)。
後藤だったらもうこのタイミングで大賞をあげておこうと。それもわかります。でも僕はみんなが眞名子さんを挙げてるのがすごく素敵だなと思って。正直僕はあんまり想像してなかったですけど、確かに素晴らしいですよね。
accobinちなみに言うと、2作に絞る前、3作目に考えてたのはPeterparker69だったので、そう考えると全員が挙げたことになるなって。野口さんに関しては…前回で特別賞のカードは切っちゃってるんですもんね。前回の賞金は何に使われたんですかね?
有泉確かに、それちょっと気になるかも。
ー今回のアルバムの制作費に充てられてるかもしれないですよね。
accobinだとしたらすごくいい循環ですよね。それでまたノミネートされるのは。
後藤でも、野口くんにはもっと問答無用の何かを作ってほしい感じもしますね。もうみんなですっきり「これは来たでしょ!」みたいな。もっと大きい何かを震撼させられる才能だと思うから、そういう意味では、もう一回特別賞でもいいような気がします。レコーディングの文脈でいうと、ソロのアーティストは演奏者のギャラも含めてレコーディングにお金がかかるところもあるから、その意味でも、みんなが推してた眞名子さんを大賞に選ぶのは新しい感じがしますね。これまでのアップルビネガーだと、録音やミックスのシグネチャー的な視点では、Peterparker69と野口くんが抜けてるなと思うけど、でもそれを歌で超えてきたっていうのは新しい可能性というか、眞名子新は絶対AIでは作れない、みたいなね。ある程度DAWの使い方に長けて、宅録できて、自分でミックスできて、そういう人たちしか世に出ていけない、みたいな状況の中で、彼は歌の才能で突破していく、これは夢があるなと思います。眞名子くんがさらに突き抜けていくと、「私ギター1本しかないけど」っていう人たちも希望を持てる。なんでもできるスーパーマンだけが囃し立てられるわけじゃなくて、その人らしい歌声を持って、オンリーワンな存在として世に出ていけるんだっていうのは、すごくポジティブに見えますよね。
ーもしみなさん異論なければ、眞名子さんが大賞でよいでしょうか?
全員いいと思います。
ーでは大賞が眞名子さんで、野口さん、Peterparker69、kurayamisakaを特別賞にしますか?
後藤そうですね。賞金が現時点で130万円あるので、特別賞の3組に何万円ずつ送るかを考えて、残りを眞名子さんに渡すのがいいかもしれない。例えば、3組に10万円ずつお渡しして、眞名子さんが100万円か、特別賞を20万円ずつにすると、合計60万円なので、70万円が眞名子さん。100万円は夢がありますよね。
accobinそうですね。レコーディングにもちゃんと使えそう。
後藤もう一本素敵なアコギを買ってもらうとかね。
accobin特別賞はスタジオ何日分なんでしたっけ?
後藤大賞が平日5日間無料で、残りの人たちはノミネートされただけで2日間無料にしたいなと。事務局にも承諾してもらっています。
accobin特別賞も2日ずつはあるってことですもんね。
後藤あります。kurayamisakaはもし希望するなら3日間とかに伸ばしてあげてもいいかなって。ロックバンドで、あの人数だし、3日間ぐらいあるといいよねと思うので。
有泉もしかしたら、Peterparker69が「だったら生ドラム録りに行く」ってなる可能性もなくはないですよね。
後藤そう考えると、特別賞は3組とも3日間でいいかもしれないですね。
こうして今年の大賞は眞名子新さんの『野原では海の話を』に決定。眞名子さんには賞金100万円と、スタジオ5日間の無料権を贈呈。特別賞の野口文さん、Peterparker69、kurayamisakaの3組には、それぞれ賞金10万円と、スタジオ3日間の無料利用権が贈られます。

“野原では海の話を”
眞名子新

“藤子”
野口文

“yo”
Peterparker69

“kurayamisaka yori ai wo komete”
kurayamisaka
総評
accobin今年はゴッチさんが「胃が痛い」って言ってないなと思ったんですけど、私もようやく胃痛なしにこの選考会を楽しめるようになってきて、それはやっぱりゴッチさんが続けてきたからなんだろうなって。最初は責任の重さがあったり、自分の明るくない分野も選考することになるから、毎回結構ドキドキしてたんですけど、今回はすごく楽しみで。9年続いてるからこそできてきた土台があって、作品の好きなところをみんなと共有して、すごく楽しくやらせてもらって、日本の音楽の素晴らしさを今年特に感じて。今の日本の一番面白い部分が今年のノミネートに集まってたんじゃないかなと思って、すごく誇らしい気持ちになりました。本当に全部良かったし、大賞に選ばれた方も、特別賞に選ばれた方も、もう次が聴きたいっていう方たちばっかりなので、これから本当に楽しみです。ありがとうございました。
mabanua僕も人の作品に対して批評をするのは罪悪感が未だにあるんですけど、ある程度きっちり発言することで、若い人たちの刺激になったら嬉しいし、「mabanuaはこう言ってるけど、自分はそう思わない」っていうのであれば、それも一つの意志の強さの表れだから、こういった賞が何かのきっかけになればいいなと思って、今回はきちんと発言をするようにしました。最近の新しい音楽を聴いてて思うのは、自分が若いときに比べて、音のキャンバスがすごく広がったような気がしていて。昔は人種とか国とか、ジャンルの壁みたいなものを感じてたんですけど、そういったものがほぼなくなってきてる。A4の紙にどういう音楽を書くか、みたいなことを若いときはしてた気がするけど、今は模造紙ぐらいのものにみんな好きに音楽を書いてるような感じがして、それは今日出たアーティストの人たちの音に全部表れてる感じがあるので、ある意味羨ましいなと。キャンバスが広い分、何でもできてしまうところにまた弊害が生まれてきたりもするとは思うんですけど、でもそういうことを繰り返して、音楽は回っていくんだろうと思うので、改めてそういうことを感じるいいきっかけになりました。
Licaxxx今年は本当に自由に音楽を表現してる人たちが多いノミネートだったかなと思うので、こちらも伸び伸びと音楽を聴けたような気がします。
有泉まず、今年も本当に素晴らしい作品が多かったなと思います。これはこの選考に参加させていただくようになってから毎回言っていることではありますが(笑)、本当に近年、日本の音楽はどんどん面白くなっているなと実感します。その背景にはジャンルの垣根を自由に越境できる環境だったり、音楽的な素養も高まっていってることだったりが反映されてると思うんですけど、そういう時期が続いているからこそ、個人的にはあんまり小綺麗に収まらない、もっとユニークで変なものが見てみたいっていう気持ちが以前よりも強くなっていて。アベレージは確実に上がってるし、世界に対して誇れる音楽が増えていってる分、「あなたにしか作れないものはなんですか?」っていうものを聴きたい気持ちがとても高まってるというか。リスナーの数や再生数が可視化されちゃう時代だし、意識的にも無意識的にも、いろんな外的要因に振り回されてしまうことも多い分、クオリティの高いクレバーな作品が増えている一方で、そこから突出するものが実はちょっと少なくなっている印象もあって。もっともっと思い切って逸脱してもいいんじゃないかなと。AIとかいろんな問題もある中で、やっぱりその人自身が何をやりたくて、何を感じていて、何を発信したいのかっていうところが見えるものが聴きたい。音楽力の高い、いい作品が多いからこそ、そういうことを思った年でもありました。
後藤いろんな言葉が投げかけられましたけど、選ばれた10作品は本当にそれぞれに素晴らしいので、胸を張ってもらえたら。作品について語ることって、ある種のエールだと思うんですよ。でもこれはなかなか難しくて。毎回、緊張しながら言葉を選びますけど、これだけ大量に音楽があって、スルーされまくってる中で、ちゃんと作品を聴いて言葉を送りたい。話し方が拙いところもありますけど、これは本当に言葉と力の贈り物なので、ポジティブな何かに変換してもらえたら嬉しいです。あとは賞として、僕がやっと緊張しなくなったのは、スタジオの無料使用権という形で、ノミネートした全員に贈り物ができるようになったからで。もともと若手のミュージシャンを支援したくて始めた音楽賞なのに、賞金を全員に分配できないところに心苦しさを感じてたけど、これからはぜひスタジオを利用してもらって、何かの助けになったら嬉しいです。大事なのは作品の中に収録されない時間のような気もしていて、スタジオのいいところはそういう時間を積み重ねられることで。今はスタジオ代が高いから失敗できなくなっちゃってるけど、アジカンにしろチャットモンチーにしろ、幸運なことに、スタジオでいっぱい失敗できたんですよね。無料分はそういう時間に当ててもらえたら嬉しいなと思う。AIは「体験すること」は絶対に代わってくれないので、これからは自分で作る意味がより重要になってくると思うんですよね。プロンプトを打ち込んで、いい感じのものができて、そこに喜びを見出す人がいてもいいし、その楽しさを僕も感じてるけど、僕はやっぱり仲間と集まって、いい音で録れたときに感動してきたので、そういうレコーディング・スタジオの文化をこの賞と一緒にいろんな人に手渡していけたらなと思います。今年もとても楽しい時間でした。ありがとうございました。



