APPLE VINEGAR - Music Award - 2025

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大賞選出

ここからいよいよ大賞及び特別賞の選出へ。昨年同様にディスカッションで選出をすることが決まり、10分の休憩中に選考委員それぞれが考えをまとめ、選考会が再開されました。

後藤僕から言うと、正直今年はそれぞれに良さがあって、決め手に欠けるなとは思っていて。圧倒的な何かっていうのをどの作品にどう感じるのかは、それこそどこにフォーカスするかで変わっちゃうような気がするというかね。すごく悩ましいです、今年は。

ーいつも話すのが、作品自体をしっかり評価するのか、それとも賞金を渡してサポートをすることでこの先が楽しみになる人を選ぶのか、というポイントですよね。

後藤でもまあやっぱり大賞に関しては例年作品自体の評価ですよね。去年の君島くんもそうだったし、今年もその流れで、どの作品がふさわしいのかを選ぶのがいいと思います。

mabanua僕は大賞は井上さんかなという気がしていて。プロフィールを見たら「2022年に活動を始めた」と書いてあって、その意味では本当に新人ということで、やっぱりサポートしてあげたいなというのもあるし、あとすごくセンスのいいお金の使い方をしそうじゃないですか。そういうところも含めていいんじゃないかと。で、次点がんoonで、あとはMONO NO AWAREかDos Monosかなっていう感じ。

後藤確かに、井上さんは素晴らしいですよね。自分の好みに寄っちゃうと、MONO NO AWAREの達成を評価してしまうんだけど、途中でも言ったように、すでにキャリアがあるよねっていうのは事実なので、そこは一つ悩ましいところではあります。ただ作品性で行くと、MONO NO AWAREはやっぱり抜けてるなと思うので、悩ましい。

Licaxxx作品のクオリティで言うと、Dos MonosかMONO NO AWAREかなと思っていて。Dos Monosは個人が目立ってるけど、Dos Monosとしてはまだあんまり評価されてないかなと思うので、Dos Monosに賞をあげたいなというのと、MONO NO AWAREも知名度は上がってきてますけど、でももっと評価されていいと思うので、その二つかなと。

accobin私もLicaxxxさんと全く一緒ですね。Dos MonosとMONO NO AWAREが作品的にはすごくクオリティが高いし、どっちも本当に解放されているというか、突き抜けてるから。去年の君島さんの流れで言うと、もちろんキャリアもあるけど、ただただ素晴らしい作品だなということで選ばせていただきました。制作費用の補填として考えると、んoonや松永さんのさらなる音の研究に賞金を使って欲しい気持ちも強いんですけど、作品のクオリテイの面で言うと、最初に言った二作かなと。

有泉私はDos Monosを推したいと思うと同時に、井上さんにも何かしらの賞をあげたい。Dos Monosの『Dos Atomos』に関しては、私はこのアルバムが到達点というよりも、このアプローチの始まりっていう印象を持っているんですけど、とはいえ他にないバランス感で新しいサウンドを作ったなと思うし、ロック文脈でもヒップホップ文脈でも捉え切れないものをちゃんと打ち立てたと思います。で、井上さんのアルバムも本当に始まりの作品だと思うんだけど、井上さんのタームでも話した通り、表現ってなんだろう、歌ってなんだろうっていうことをもう1回改めて提示してくれるような部分があるので、そこはちゃんと評価したいなって。

ーDos Monos、MONO NO AWARE、もしくは井上さんの名前がよく出ましたかね。

後藤確かにMONO NO AWAREとDos Monosの達成っていうのは、APPLE VINEGAR的に評価したい中堅バンドのブレイクスルーみたいな、大事な瞬間ですよね。この2組を大賞にして、あとは井上さんにも特別賞として…marucoporoporoさんとか松永くんとか、インディペンデントでやってる人にも制作費を差し上げたい感じはしますけどね。

有泉私もmarucoporoporoさんにはあげたいです。この方がたとえば新しいシンセとか機材を得た時に、音楽がどういう広がりを見せるのか、すごく楽しみだし。

Licaxxx確かに。まだAbleton Liveの音がするから、いっぱいシンセを足してほしい。それで言うと、Nikoんもかっこよかったから何かはあげたい。

後藤それこそNikoんはバンドだから制作費が必要ですよね。じゃあ井上さん、marucoporoporo、Nikoんに制作費10万ずつで考えて、全体から30万を引いて、残った額を割って大賞の2組に渡すとすると…それだと割り切れないのか。そうしたら僕が賞金をあと5万出すので、松永くんにも10万差し上げて、そうすると90万残るから、それを割って45万ずつ、MONO NO AWAREとDos Monosに贈るのがいいかもしれませんね。みなさんどうでしょうか?

全員いいと思います。

こうして今年の大賞はMONO NO AWAREとDos Monosの2組に決定。同時受賞は2021年のBIMとラブリーサマーちゃん以来4年ぶり2回目、そして、純粋なバンド/グループが大賞に選ばれたのは「APPLE VINEGAR -Music Award-」8年目にして初の出来事となりました。賞金として大賞の2組にはそれぞれ45万円、特別賞の井上園子、marucoporoporo、Nikoん、松永拓馬にはそれぞれ10万円が贈られます。

大賞

“ザ・ビュッフェ”
MONO NO AWARE

“Dos Atomos”
Dos Monos

特別賞

“ほころび”
井上園子

“Conceive the Sea”
marucoporoporo

“public melodies”
Nikoん

“Epoch”
松永拓馬

総評

mabanua音楽のフォーマットがどんどん変わっていく中で、最近はこうやって順位が可視化されることが良しとはされていないのかもわからないですけど、でもやっぱり僕は必要なのかなという気がしています。で、経済的な問題はあるかもしれないけど、途中でゴッチさんも言ってたように、ジャンルとかそういったものから、よりその人自身の伝えたいこととかルーツみたいなところに回帰してる感じがノミネート全体を通して見えたので、そういう意味では音楽を作りやすい時代になっていて、それはいいことなんじゃないかなと思いました。

Licaxxx今年もいろんな音楽が作られて、全然違うジャンルなのに、歌詞では近い世界観のことを言っていたり、そこにすごく時代性を感じたんですけど、でもやっぱり私はDos Monosが特に面白かったです。

accobin今年のノミネート作品は「なぜ音楽という形なのか?」みたいな答えを導きながら作って、それが形になった作品が多いような印象があって。私自身はここ数年徳島に住んでて、海とか山に囲まれた生活をしてて、テレビも全然見ないし、いわゆるマスの意識がどんな感じで変わってるのかも全然コネクトしてないと思ってたんですけど、「なぜ音楽なのか?」は自分も考えてるタイミングやったから、そこが共鳴してるのが面白いなと思いました。これは音楽制作に特化した流れなのか、世界全体の流れなのかはわからないですけど、途中でゴッチさんが言ったボディとか、自分っていうものとか、もっと言うと命の循環とか、そういうことに多くの人が立ち返ってるのは確実やと思うし、俯瞰して見るからこそ、どんどん真理に近づいていくようなことが、音楽にもだいぶ反映されてるんかなっていうのは思いました。商業としての音楽が成り立たなくなってきた背景はもちろんあるけど、だからこそこの流れが強くなってるし、今はめっちゃ面白い音楽史の真ん中にいるんじゃないかなって思いました。

有泉mabanuaさんのお話と近くなっちゃうんですけど、今は本当にいろんなジャンルが混ざってるし、ある程度のリファレンスももう出揃ってるし、集合知やAIも含め、音楽を作る上での参入障壁みたいなものはすごく低くなってると思うんです。でもだからこそ、自分がどんな意思を持って何を表現したいのか、そしてそれをどう作品に落とし込むことができるのかがものすごく重要になってくるなっていうのは近年すごく感じていて。もちろんそれって、いつの時代においても大切なことだったと思うけど、より重要になっているんじゃないかなと感じる中で、今回の作品群はそれが見えるものがとても多かったなという印象があります。そういうことを改めて感じられたのは、個人的にはとてもポジティブな印象を持っています。

後藤今年もありがとうございました。賞の運営はなかなか大変で、だんだん自分の手から離していきたい気持ちがありつつ、こういう賞をどうやってフェアなものにしていくのかはやっぱり課題で。まあでも何かを評価するときって、あんまりフェアじゃない気もするというか、そのフェアじゃなさを引き受けることが、この音楽賞の役割じゃないかな、みたいな。「チャートに入っていない音楽は俎上に上がりません」みたいな音楽のあり方は、本来良くない流れなので、また一年かけて、いろんな人に相談しながら賞について考えていきたいなと思います。でも本当に今年も素晴らしい作品ばかりで、この賞のあり方の性質上、大賞を選んでますけど、それぞれにそれぞれの達成があって、角度を変えればそれぞれがその分野ではぶっちぎりの何かだとは思いますので、大賞ではなかった作品も、あるいはノミネートされなかった作品についても、何ら恥じることなく、胸を張って欲しいなと思います。AIが音楽を作るような時代になる中で、これからはそれでも作りたいっていう気持ちが大事になっていくし、そういう気持ちを持ってる人たちがいるからこそ、僕たちはこうして毎年いろんな作品を聴けるので、改めてエールを送りたいです。「Music inn Fujieda」も一年かけて整備して、なるべく多くのミュージシャンに恩恵があるような形で運営していきたいと思います。追ってこの賞にノミネートされた人たちがタダで使えるようなプランも練っていきたいと考えていますので、ぜひぜひみなさん注目していただければと思います。

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